衆議院憲法審査会で発言「自衛隊のネガティブリストとポジティブリストについて」

7月9日 衆議院憲法審査会で発言「自衛隊のネガティブリストとポジティブリストについて」

1.はじめに

 自由民主党の下村博文です。本田委員の発言に沿って重ねて発言したいと思います。
 軍隊の行動について、諸外国では、一般的に、「『してはいけない』と列挙されていること以外はしてもよい」という「ネガティブリスト方式」で規律されています。
これに対して、自衛隊は、「『してよいこと』として列挙されている権限のみを行使できる」という「ポジティブリスト方式」で規律されている、と指摘をされることがしばしばあります。
 確かに、自衛隊創設以来これまで、防衛出動が下命されたことは、幸いにして一度もありません。そのため、自衛隊はポジティブリストで行動してきたことは事実です。
 しかし、いざ防衛出動し、武力を行使する際には、自衛隊も自衛隊法88条の規定に基づいて、ネガティブリスト方式で行動することになっていることを、改めて整理して申し述べたいと思います。

2.ネガティブリスト方式による規律

 まず、「ネガティブリスト方式」とは、「そもそも軍隊は、国と国民を守るためであれば、原則として何でもできる権限が与えられる。ただし、例外的に、個別的に列挙される制限事項についてだけは行うことができない」と位置付けられるものです。
 そして、その制限事項としては、国際法による規制、例えば、①非軍事目標に対する攻撃の禁止や、②捕虜・文民の取扱に関する規制などが挙げられます。逆に言えば、こういった制限以外の事項は、国を防衛するためには何でもできる、ということです。

3.自衛隊の武力行使に対する規律方式

 外国からの武力攻撃があった場合の自衛隊の対応について、具体的に条文に当たりながら、説明します。

(自衛隊法88条の規律内容)

 外国からの武力攻撃があった場合に、防衛出動が下命された自衛隊は、必要な武力行使を行うことになりますが、その根拠は、自衛隊法88条になります。
 まず、第1項で「防衛出動を命ぜられた自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる」とされ、第2項で「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」を超えない限り武力を行使することができるとされています。
 その上で、同じ第2項では、「武力行使に際しては、国際の法規及び慣例を遵守しなければならない」ともされています。
このように、自衛隊は、外国からの武力攻撃があった場合、我が国の存立と国民の生命・財産を守り抜くために必要かつ十分な武力行使は原則何でも可能であり、「できない」ことは「国際法上できない」ことのみに限られているということです。
 諸外国の軍隊と全く同様の典型的な「ネガティブリスト方式」となっていることが御理解いただけるかと思います。

(自衛隊法上の適用除外規定)

 なお、防衛出動時においても、自衛隊法に適用除外規定がない限り、一般法の規制は自衛隊にも原則そのまま適用され、結局は、「国と国民を守り抜くための武力行使は、原則何でも可能」とは言えないのではないか、という指摘をいただくことがあります。
 例えば、自衛隊法106条では、自衛隊の行う火薬類の製造、貯蓄、運搬、消費その他の取扱について、火薬類取締法の規定を適用しないこととなっており、こうした個別の適用除外規定がない限り、武力行使を行う自衛隊に対しても通常どおりの規制がなされるのではないか、という疑問です。
 しかし、こうした適用除外規定が妥当するのは、あくまでも「戦闘行為以外の場面」と解されています。
 すなわち、防衛出動の下命がなされ、自衛隊が武力を行使するといった「戦闘行為」の場面では、先ほど申し上げた自衛隊法88条が優先的に適用されますから、適用除外規定の有無は関係ありません。このことは、政府答弁でも明確に述べられています。

4.おわりに

 以上、自衛隊も、「防衛作用としての活動」の際には、法制度上も、ネガティブリストで行動することを申し述べました。
 このことは重要な点ですので、憲法審でさらに議論を深めていただくいくべきである申し上げて、私の発言を終わります。